人手不足・人件費高騰解消へ IoTを活用したトラース・オン・プロダクトの保守・メンテナンスDXへの取り組み

日本は、少子高齢化の影響が社会のあらゆる領域に及び始めています。ビル、工場や公共インフラなどの「保守・メンテナンス」分野もそのひとつ。設備を安定稼働させるための巡回、点検、監視、データ確認、異常時対応など、高度経済成長期以降に整備された膨大なインフラ群を支えてきた仕組みは、今大きな転換期に差し掛かっています。
一方で、IoT・AI・クラウドを活用した保守の省力化・自動化に取り組む企業も増えてきました。株式会社トラース・オン・プロダクトもそのひとつです。トラース・オン・プロダクトが展開する「AIrux8」は、保守の現場に新たな選択肢を提示し始めています。
本コラムでは、現在の労働構造の変化と保守現場の課題、国内外の先進事例、そしてトラース・オン・プロダクトが目指す保守・メンテナンスDXについてお伝えします。

少子高齢化により労働人口が減少 今後も減少が続く

(図1:総人口の推移 出展:人口推計-総人口の推移(総務省統計局))
日本の労働人口の減少が止まりません。11月20日に総務省から公表された人口推計によると、2025年6月1日現在の日本の総人口は1億2319万人で、前年同月に比べ59万人減少しました。15歳から64歳までの生産年齢人口は7356万9000人で、前年同月に比べ20万2000人の減少。総人口の推移を見ると少子高齢化が加速の一途をたどっていることがわかります。総務省の統計によれば、2020年から2040年までの20年間で生産年齢人口は約1100万人規模で減少すると推計されています。
特に50歳以上の比率が急速に上昇しており、現場作業や巡回業務、設備点検といった身体的負担が大きい職種では、担い手確保が難しくなりつつあります。
ビルメンテナンス:労働力は横ばいだが、人材確保と人材の高齢化が大きな課題

(図2:ビル設備メンテナンスのイメージ)
ビルや商業施設などの設備管理の業務を行うビルメンテナンス分野でも状況は変わりません。全国ビルメンテナンス協会が公表する「ビルメンテナンス情報年鑑 2025」によると、直近の労働力人口は横ばいであり大きく減ってはいないとされています。一方で多くの企業が課題として挙げているのが、
・現場従業員が集まりにくい
・現場従業員の若返りが図りにくい
・賃金上昇が経営を圧迫している
・現場管理者が育ちにくい
といった、人材確保や賃金面に関する事項です。ビル設備管理は24時間365日の対応を求められるケースもあり、働き方の柔軟性が限られています。現場ではすでに「巡回ルートの見直し」や「外部委託の増加」、「資格保有者の囲い込み」などで対応を図っているところもあるものの、抜本的解決には至っていません。
(出展)ビルメンテナンス情報年鑑2025(公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会)(PDF)
公共インフラ、工場、鉄道などの保守メンテナンスでも人手不足・人件費高騰が深刻な課題に

(図3:設備保守メンテナンスのイメージ)
労働人口の減少は、機械や設備の保守メンテナンス業務にも影響を及ぼしています。工場設備の保全、発電所や変電所、鉄道インフラ、橋梁、トンネル、下水道、河川など、様々なインフラで保守要員の確保が難しくなっています。
人手不足に伴う人件費の高騰もあり、保守業務を請け負う企業では、社員の確保・育成コストが増大し、価格転嫁が難しい案件も出てきています。公共工事の入札や点検業務では技術者が不足し、業務自体が受注されない調達不調が増加している自治体もあります。
保守の現場は今、
・人手不足
・熟練者減少
・コスト高騰
・膨大な設備の老朽化の波
という四重苦に直面している状況です。
また、橋梁、道路、河川、砂防、トンネル、下水道などの多くが、高度経済成長期以降に建設されています。今後、建設から50年以上経過する施設の割合は加速度的に増加する見込みです。国土交通省の発表では、
・2033年時点で全国の道路橋の約63%、トンネルの約42%が建設後50年以上を経過する
・下水道管路の多くが更新時期に入る
・ダム、港湾、河川施設でも老朽化が進む
など、今後の膨大な維持管理・更新需要が予測されています。これはつまり、仕事量が増えるタイミングで担い手が減るという、構造的な問題が生じることを意味しています。
(出展)国土交通白書2020 第1節 社会構造に関する予測など
保守メンテナンスに対するDXが検討される機会が増加
人手不足、技能継承の困難化、インフラ及び設備の老朽化、コストの増加。これらの同時多発的な問題の中で、解決する手段として注目が集まっているのが、IoTやAIなどを活用した「保守・メンテナンスのDX」化です。保守・メンテナンスのDXは、大きく以下の3つに分類されます。
(1)状態監視の自動化
IoTセンサーやゲートウェイを通じて、温度、湿度、振動、電力、流量、圧力、異音、においなどを常時モニタリングし、異常の早期検知や遠隔管理を実現します。
(2)予知・予防保全
AIが過去データや運転ログから劣化兆候を分析し、故障前に対応することで、常時安全な環境を実現します。
(3)巡回や点検の省人化・自動化
各種センサー、巡回ロボット、ドローン点検、画像解析、AI判定ツールなどを活用し、人が現場に行く頻度を削減します。
これらはすでに、工場・プラント、公共インフラ、鉄道などを中心に導入が始まっており、一部では効果が出始めています。
保守メンテナンスのDX事例-工場・プラント/公共インフラ/鉄道・地下鉄
工場・プラント
工場やプラントは機械の故障停止による損失が大きく、予知・予防保全の投資が進みやすい分野です。特にプラントではAIやドローンを活用した「スマート保安」が進んでいます。
・IoTによる振動・温度監視
・AIによる予知保全(ポンプ・モーター・回転機器)
・空調・ボイラー・冷凍機の遠隔監視
・工場全体のエネルギー最適化(省エネ)
一方で、現場で直面している保安や生産性に関する課題の中には、AIの導入が適切でない場合もあります。判断を伴う業務など、すべての保守・メンテナンスを自動化できるわけではなく、AIと人との協業が求められます。
(出展)プラントにおける先進的AI事例集(石油コンビナート等災害防止3省連絡会議)(PDF)
公共インフラ(道路・河川・砂防・下水道)
公共インフラでは、人員不足の自治体では特に、人による巡回とあわせて遠隔監視と自動判定の仕組みが求められています。
・ドローンやカメラの画像解析による点検の自動化
・河川水位・流量センサーによる災害監視
・AI画像解析を用いた下水道管路のひび割れ検知
・道路や橋梁の変状の自動検出
道路ではこれまで近接目視のみで行っていた業務の支援としてドローンを活用。今後はセンサーなどによるモニタリングデータやAI技術等を活用した点検のデジタル化を推進していきます。ダムでは、水中ロボットを用いた施設点検を実施。水中カメラを活用し設備の腐食、損傷、変形などを確認する試みが行われています。上下水道では、2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、老朽化対策へのデジタル技術の導入が推進されています。特に、老朽化の見える化を進めることで、点検の効率化だけでなく老朽化対策による水道料金の値上げなどへの住民の理解を得ることも意図されています。
(出展)インフラ分野のDXに向けた取組紹介(国土交通省)(PDF)
鉄道・地下鉄
鉄道や地下鉄は安全性への要求が極めて高い分野の一つであり、AIの活用も積極的に進められています。
・軌道の変形・摩耗の自動検知
・電気設備の遠隔監視
・車両の運転データからの予兆検知
・画像解析によるトンネルのひび割れ判定
また、これまで手作業で管理していた電気設備の検査・修繕計画の策定業務や検査結果の登録業務などを電子化する取り組みも行われています。
(出展)大江戸線都庁前駅にて5G活用プロジェクトを開始(東日本電信電話株式会社)
鉄道電気設備保守管理システムREFMa(レフマ)を導入し、設備点検業務のDXを推進します(東京メトロ)
トラース・オン・プロダクトの「AIrux8」が目指すもの:「省エネ」「省人化」「省CO2」

(図4:AIrux8管理画面のイメージ)
株式会社トラース・オン・プロダクトが提供するAIによる電力コスト削減システム「AIrux8」は、AIとIoTを活用して空調や照明の無駄な電力消費を削減する省エネソリューションです。
工場、ビル・商業施設、オフィスや店舗などにおいて、最大のエネルギー消費減となる空調・照明の運転状況をリアルタイムで把握し、AIが「快適さを維持しながら、最も電力消費の少ない運転」を自動で導き出すことが大きな特徴です。
その結果、快適な環境を創り出した上で省エネ・省CO2を高いレベルで実現することができます。
またAIrux8は、各センサーデータを数珠つなぎに連携させ、それらのデータについて一元的にモニタリング、アラーム管理、予兆管理を行うことから、「省人化」の観点でも効果があります。
これまで人が行っていた空調・照明の微調整や監視業務をAIが肩代わりし、現場スタッフの作業負荷を大幅に軽減します。エネルギー管理担当者が複数拠点を一元管理できるダッシュボードも備え、データに基づく判断を支援します。

「IoTインテグレーション」でビル・商業施設の設備保守・メンテナンスのDXを推進

(図5:保守・メンテナンスの見える化のイメージ)
AIrux8で培ったIoT設計・データ分析・センシング技術を応用し、次のステップとして展開するのが「IoTインテグレーション(統合)による保守・メンテナンスのDX」です。
これは、商業施設やオフィスビルといった建物におけるビル設備の保守・メンテナンス業務をIoT化により可視化し、省人化を図り、人手不足・人件費高騰の課題の解消を図るものです。
従来、人手による巡回や目視点検、紙ベースの点検チェックシートに依存していた業務を、センサーとクラウドデータを基盤に効率化します。
具体的には、
・温度・湿度・振動・電流・電力・音・においなどのセンサーからのデータ
・ポンプ・ファン・空調機などの稼働データ
・電源異常・ブレーカーの状態
など、これらをクラウドに集約し、ビル全体の設備状況を一覧できるダッシュボードを構築します。
このようにデータの見える化を図ることで、
・故障兆候の早期発見、予知・予防保全
・異常検知時の自動アラート通知、リモート発報
・巡回頻度の削減、判断の標準化、人に頼らないモニタリング
・場所を問わない遠隔監視、センタライズ・リモート監視
といった省人化と属人化の廃止を実現します。
ビルなどの商業施設では、夜間巡回・休日巡回・多数テナントの空調設備管理など、運用負荷が大きい現状があります。このサービスは、“人手不足が深刻なビルメン業界の省人化を直接支える技術”として、期待が高まっています。
これまで、ビルメンテナンス業界などが取り扱う施設の設備は多種多様であり、一律のIoT化が難しい分野でもありました。トラース・オン・プロダクトの知見を生かした各種センサーによるデータ取得、統合モニタリングの実現は、この課題を解決し、それぞれの現場に合わせて最適化を行います。
最終的には、蓄積されたデータをAIなどで解析し、故障の予兆を検知することで予防保全を行い、人の手を介さずに最適な設備運用を目指します。こうした設備予防保全を実現することで、省人化だけでなく、いつも快適な環境を維持し、「安全・安心・快適」な空間の維持に貢献することになるでしょう。
おわりに
築30~50年のビルが増えている中、最適環境を最適エネルギーで提供するトラース・オン・プロダクトは、AIrux8にて老朽化するビルをスマート化すると同時に、保守・メンテナンスのDX化を実現します。
保守・メンテナンス業務が大きな転換期を迎える今、業務のDXは労働人口の減少とともに本格的に進む見込みです。IoT、センシング、統合モニタリング環境の構築などに強みを持つ企業の力が今後多くの分野で求められます。
保守・メンテナンスのDXについて興味のある方は、当社ホームページよりお問い合わせください。
▼AIrux8についてもっと詳しく知る―まずは簡単シミュレーションから
お役立ち資料

IoT技術の活用が進む業界における当社事例をまとめた資料です。IoTソリューションを活用して新たなビジネスや製品開発をご検討中の企業様は是非ご覧ください。



