IoT における課題を解決するエッジコンピューティングとは?

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エッジコンピューティングとは、端末やそれと接続されたサーバでデータ処理をおこなってからクラウドなどの上位システムにデータを送信することで、負荷を分散するネットワーク技法のことです。端末から収集した情報をクラウドで処理する前に分散して処理するため、低遅延・ネットワーク負荷の軽減などのメリットが得られます。

近年、IoTや5Gなどの発展で大容量のデータを取り扱うことが多くなったことで注目されています。

今回は、そんなエッジコンピューティングについて説明・事例の紹介をしていきます。

エッジコンピューティングとは?

エッジコンピューティングは、端末などのネットワークの端(エッジ)で1度データ処理をおこなってから上位にあるクラウドなどにデータ送信するネットワーク技術のことで、エッジ処理とも呼ばれます。

従来は、端末やセンサーなどから送信・収集されたデータをすべてクラウドに集約して、クラウドサーバ上で処理をおこなう技法(=クラウドコンピューティング)が一般的でした。

しかし、昨今はさまざまなモノから送信されるデータの容量が大きくなり、1度に収集して取り扱うデータの種類も増えているため、クラウドコンピューティングではクラウドサーバに処理負荷が集中したり、ネットワーク通信に遅延が発生したりとさまざまな問題が発生しやすくなっています。

そこで、クラウドにデータを送信する前に、端末やそれと接続された周辺のサーバ(=エッジサーバ)で処理をおこなうことでデータ処理の負荷を軽減したり、処理済みのデータのみをクラウドに送信することでネットワーク通信の負荷・遅延を軽減したりといった技法、エッジコンピューティングが注目を集めるようになりました。

たとえば、近年増加しているIoTの場合、端末やセンサーから取得したデータをIoTゲートウェイと呼ばれる中継機にいったん集約し、中継機内でデータのクレンジング・分析などの処理をおこなってからインターネットでクラウドに送信する…といったかたちで活用されています。

エッジコンピューティングのメリット

一部、上記解説にも記載しましたが、エッジコンピューティングのメリットを以下に整理してご紹介します。

通信遅延・負荷の軽減

1つ目は、通信遅延の解消です。

エッジコンピューティングでは、処理済みの必要なデータのみをクラウドに送信するため、通信容量を抑えることができ、通信遅延を軽減することができます。

たとえば、容量の大きな画像を送信しようとするとそれだけ通信に掛かる時間も多くなりますが、あらかじめ必要な容量にリサイズ(=処理)してからデータを送信することで通信に掛かる時間を削減できます。このようにエッジコンピューティングは、ネットワークの圧迫・通信コストの増大などの課題を解決できます。

リアルタイム性の向上

2つ目は、リアルタイム性の向上です。

たとえば、カメラやセンサーなどで収集したデータを処理・分析して得られた結果を取得したいとします。

このとき、収集したデータを1度すべてクラウドに送ってから、クラウド上で処理・分析をおこない、結果を受けとる端末にデータを転送する…といった工程をとっていると、物理的に遠距離にあるクラウドサーバとネットワーク通信を介してデータのやりとりをするため、データをリクエストしてから実際にデータを受けとるまでの間に通信遅延(=レイテンシ)が発生します。

一方で、エッジコンピューティングであれば端末や近くのサーバで処理をおこなうため、レイテンシを軽減することができ、データリクエストから受け取りまでを高速化することが可能です。

セキュリティの向上

3つ目は、セキュリティの向上です。

たとえば、カメラで撮影した人物の情報やICカードから取得したログ情報、決済情報などをデータ処理・分析して取り扱う場合は、特に高いセキュリティレベルが重要視されます。

エッジコンピューティングであれば、すべてのデータをクラウドに送信することなく、処理済みのデータだけをクラウドに送信するのでセキュリティレベルの向上が期待できます。

エッジコンピューティングの活用事例

ここからは、具体的なエッジコンピューティングの活用事例をご紹介します。

「スマートファクトリー」でのデータ処理

昨今、IoTを導入して機器・設備、センサーから稼働状況などをデジタルデータとして収集することで、業務プロセスの改革や品質・生産性の向上を図る「スマートファクトリー」が台頭しています。

工場内に設置されたいくつもの機器・設備、センサーから取得されるログ情報は、容量が大きく通信量が膨大になりがちです。そこで、エッジコンピューティングの技法を使って、データを取得しているIoT端末そのものや、センサー・端末と接続されたエッジサーバ、あるいはIoTゲートウェイなどの中継機のなかで一旦データの処理をおこなうことで、その先のクラウドサーバへの通信負荷や処理負荷を軽減することができます。

製造業におけるIoT活用方法とは?得られるメリットと導入効果
工場における設備・センサーといったあらゆる機器をインターネットに接続することで、機器の稼動状況や品質情報などを見える化し、生産性向上を図る「スマートファクトリー」。Industry4.0を実現するためIoTを活用し、どのように効果を上げていくのか?その全容に迫ります。

「デジタルサイネージ」での視聴計測

近年のデジタルサイネージは、ただ映像を配信するだけでなく、カメラやセンサーを使って視聴している人がいるか・いないか、どんな人が視聴しているかなどの視聴計測をおこない、配信コンテンツの最適化やその後のマーケティング・販促企画への応用ができる機種が登場しています。

たとえば、当社で扱っている L tabletというサロンサイネージ(美容室でお客様が着座中に視聴できるタブレット型のサイネージ)では、デバイスに付属したカメラでお客様の顔の特徴点をリアルタイムに解析し、高速・正確な顔認証を実現しています。

この機能によって写真撮影を行うことなくお客様が着座しているか否かを判別できるので、サイネージに広告出稿している広告主は、広告が着座中に配信されたかどうか(=有効再生かどうか)を判別できるようになります。

この視聴計測の仕組みでは、カメラで取得した顔の特徴点をエッジコンピューティングで解析して、顔認識結果のみをクラウドに送信するため、個人情報がネットワークに流れることもなく安心です。

【事例】ドン・キホーテ店舗でサイネージ視聴率を計測!店舗マーケティングに応用できる実験
近年、デジタルサイネージはさまざまなデータと連携してリアルタイムに表示内容を最適化できるようになるなど、販促装置として急速に進化しています。「商品の売れ行き」や「気候」、「広告データ」などと連動したマーケティング効果の高いサイネージが登場しており、単に映像を見せるだけのサイネージはもはや時代遅れです。そこで当社は、「価値のあるデジタルサイネージの在り方」を徹底的に追及するため、株式会社パン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングス様の協力を得て、ドン・キホーテ中目黒本店にてサイネージの視認率計測実験を行いました。本記事では、こちらの実証実験の内容についてお伝えいたします。

IoT技術を活用した、その他のデジタルサイネージ製品について知りたい方はこちらもご覧ください。

「顔認証」でのリアルタイムな入退室管理

またエッジコンピューティングの技術を用いて、顔認証システムにおける認証速度を高速化したソリューションも登場しています。

たとえば、人物がゲートを通過する際に、ゲートに設置されたセンサー・コンピュータで通過者の顔情報を取得・処理してゲートの開閉やクラウドとの連携をおこなう、といった具合です。エッジコンピューティングを用いて顔認証が高速化されれば、ゲートを通過する短い時間の間に認証を完了させることも可能となります。

「自動車」の自動運転技術への活用

自動運転技術の1つとしても、エッジコンピューティングが活躍しています。
自動運転でも特に課題となるのが画像解析の迅速さです。

人命に関わる緊急時の判断・処理をコンピュータがおこなうためには、カメラやレーダーなどから取得された情報をクラウドに送信してから処理しているようでは対応が間に合いません。

そこで自動車に搭載されたコンピュータで、緊急性の高いデータを処理・分析して瞬時の判断を可能にするために、エッジコンピューティングの技術が活用されています。

「ドローン」の自律制御運転への活用

人の立ち入りが難しい危険地域や高所などで、インフラ設備などの自動点検や偵察を目的とした産業用のドローンが活用されはじめています。

ドローンも自動車の自動運転と同様に自律制御運転の研究・開発が進められており、風などの周囲の環境データをもとに迅速な情報処理をおこなってリアルタイムな空中での姿勢制御を実現するためにエッジコンピューティングの技術が活用されています。

以上、本記事ではエッジコンピューティングについてご紹介いたしました。

当社では、企業様が抱えるビジネス課題を解決するためのIoT技術を用いた製品・ソリューションの企画・設計・製造から、運用・保守までをワンストップでサポートしております。

IoTソリューションに関して、疑問や解消したい課題などございましたら、こちらからお気軽にお問合わせください。