IoT導入の課題とは?企業がIoT導入を成功させるポイント

2022年12月2日
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IoTの導入課題を解決

現在、ITのトレンドとしてIoTやAIが注目を浴びています。
しかし、IoT活用はその効果を認められつつも、本格的に普及しているか?と言われると、まだまだこれから感が否めません。

そこで今回は、「IoT導入における課題やポイント」をご紹介します。
IoT導入のご担当者様や、これからIot導入を検討される方の参考になれば幸いです。

IoTとは?

IoTは「Internet of Things」の略で「モノのインターネット」とも言われます。
モノからデータを収集し、そのデータを共有し、モノを操作することが出来ます。

「モノ」は「IoTデバイス」とも言われ、大きいものでは自動車・製造機械など、小さいものではスマホからセンサーまで電子機器ならなんでもIoT化の対象です。

IoTとM2Mってなに?何ができる?
IoTとM2Mってなに?何ができる?column
モノがインターネットに接続する「IoT」と、機器同士で直接通信をおこなう「M2M」。どちらも似ている概念ですが、両者の意味合いは少々異なります。本記事では、その違いと事例について解説していきます。

IoTで出来ること

■データを収集する
モノに通信機能を搭載することで、そのモノが持っていたデータをクラウドに収集することが可能です。
更に、そのモノにセンサーを搭載することで温度・湿度・音・圧力・傾き・・・等、そのモノだけでなくその周辺環境情報まで含めた様々な情報を取得できます。

■データを活用する
収集したデータをクラウドで解析し、業務改革・新規ビジネスの創出などに活用することが可能です。
バーチャルではなく、今まで取得できなかったリアルのデータを扱えるため、現実世界を大きく変える手法として期待されています。

■モノを動かす
今まで通信機能を持っていなかったモノに通信機能が搭載されることで、データを収集するだけでなく、逆に遠隔からモノを動かすことも可能になります。
また、モノが通信機能を持っているため、モノとモノが人を介さずに制御し合うことも可能となります。これにより、今までは決まったパターンでしか動くことが出来なかったモノが、状況に応じて自動的に動くことが可能になるのです。
このモノ同士の通信による完全自動化の代表格が、自動運転車や自動倉庫などです。

IoTの今後は?

IoT市場は今後も大幅に成長を続けると見込まれています。

”国内IoT市場におけるユーザー支出額について、2021年の実績(見込み値)は5兆8,948億円であり、その後、2021年~2026年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate) 9.1%で成長し、2026年には9兆1,181億円に達するとIDCではみています。”

[引用元]
IDC Japanプレスリリース「国内IoT市場の産業分野別/テクノロジー別市場予測を発表」(2022年4月4日)

・テクノロジーの進化による、活用のための技術/コスト障壁が急速に下がっていること
・もの売りビジネスからの脱却など、ビジネス転換のためにリアルを変えられるIoTが必要不可欠 ※DXを推進する際に、クラウドベースのDXだけではリアルビジネスを変えるインパクトが限定的

以上2点が、その理由と言えそうです。

IoTとDXはどのように関係する?

DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現する技術のひとつがIoTです。
DXで現場を変えようとした場合、圧倒的な変化をもたらすがゆえに、避けて通れない道になりつつあります。

企業がIoTを導入するメリット(事例)

本記事では、事例ベースでメリットを簡潔に紹介します。
業界ごとのIoTを導入するメリットの具体例は、以下の記事で詳しく紹介していますので、宜しければご覧ください。

製造業 IoT
製造業におけるIoT活用方法とは?得られるメリットと導入効果column
工場における設備・センサーといったあらゆる機器をインターネットに接続することで、機器の稼動状況や品質情報などを見える化し、生産性向上を図る「スマートファクトリー」。Industry4.0を実現するためIoTを活用し、どのように効果を上げていくのか?その全容に迫ります。
ウェアラブルデバイスで物流倉庫が変わる! 梱包業務を効率化するIoT
ウェアラブルデバイスで物流倉庫が変わる! 梱包業務を効率化するIoTcolumn
業務効率化や働き方改革の一例として、物流業界では倉庫や物流センターにウェアラブルデバイスを導入して続々と業務革新が起きています。本記事では、ウェアラブルデバイスを活用してどのような業務効率化を実現しているか紹介します。
小売店舗のIoT活用
小売業店舗におけるIoT活用方法とは?得られるメリットと導入効果column
小売業店舗において、CRM※1・業務効率化・店舗の最適化は至上命題です。店舗DXを実現するためIoTを活用し、どのように効果を上げていくのか?その全容に迫ります。※1 CRM(Customer Relationship Management) = 製品やサービスを提供する企業が、顧客と様々なタッチポイントを経由して親密な信頼関係を築くこと。顧客体験などを向上しロイヤルティを深めることで、リピーターからファン、ファンからインフルエンサーになるような活動を行うこと

ビジネスを創出・加速する事例

IoTによるビジネス創出は、古くいところだとVOD・デジタルサイネージ・防犯カメラなどの映像ソリューションがあります。
※VOD(Video On Demand):インターネットを用いて、映画やドラマなどが見れるサービス

この時代は、サーバとIoTデバイス間で映像のやり取りをする程度でしたが、今は違います。

・自動運転車
・IoT家電
・遠隔医療
・高齢者の見守りサービス
・ペットの見守りサービス
・ドローン
など、IoTにより新たなビジネスが生まれ続けています。

全く新しいビジネスを創出するだけではなく、既存のビジネスを変化・加速させるソリューションとしてもIoTは非常に有効です。

・店舗にIoTを導入し、顧客の行動分析から店づくり・販促に活かす
・倉庫にIoTを導入し、業務の効率化・省人化や品質の向上を図る
・農業にIoTを導入し、業務の効率化・省人化や品質の向上を図る
・工場にIoTを導入し、機器の予防保全を行う
など、こちらも挙げればきりがない程沢山の事例があります。

既存のビジネスからの脱却や加速の為に、IoTを検討する価値は十分にあると思います。

生産性を向上する事例

IoTにより生産性を向上させる一例を紹介します。

■見える化による生産性向上
・工場の設備や機器からデータを集め、現行業務のボトルネックを把握し、工程やレイアウト等を変更する
・IoTデバイスに搭載されたセンサーを通じて製品や機器の状態を把握することで、現場に足を運ぶ必要がなくなる
・リアルタイムに機器の情報を得られることで、機器の異常の予兆を把握し、故障が発生する前にメンテナンスを実施できる

■遠隔操作による生産性向上
・本部にいる人が現場のIoTデバイスを操作することで、現場に足を運ぶ必要がなくなる
・ベテラン社員が遠隔から現場の新人のスマートグラスを通して視覚を共有することで、OJTの為に現場に足を運ぶ必要がなくなる

■自動化による生産性向上
・セルフレジにより、レジ業務をお客様に移管
・電子ペーパーによる、棚札差し替え業務の削減m

品質を向上する事例

IoTにより品質を向上させる一例を紹介します。

■ミス削減による品質向上
・人の作業が減ることで、オペレーションミスを削減。それにより製品や出荷の品質を向上させる

■自動化・最適化によるサービス品質向上
・棚から商品が無くなったらリアルタイムでスタッフに通知。それにより、機械ロスを抑制

顧客を知る事例

IoTにより顧客を知る一例を紹介します。

■来店客の性別・年代などを分析
・店舗毎の来店客の傾向を把握し、エリアマーケティングに役立てる

■来店客の導線を分析
・導線を阻害するような滞留があれば、店舗レイアウトなども見直す

企業がIoTを導入する際の課題

ここからはIoTを導入する際に直面する課題を紹介致します。

導入にあたり乗り越えなければならない壁は多いですが、その分、他にはないインパクトを生み出すことが可能です。

ネットワーク負荷・データ量の課題

総務省の令和3年版 情報通信白書では、2016年に173億台だったIoT端末が、2023年には340億台になると予測されています。

各拠点でIoTデバイスが増加することで、拠点毎の通信負荷は増大します。そして、それを集中管理するサーバの通信量・データ量も爆発的に増えてきます。

この課題に対しては、「エッジコンピューティング」が効果的です。
エッジコンピューティングとは、端末やそれと接続されたサーバでデータ処理をおこなってからクラウドなどの上位システムにデータを送信することで、負荷を分散するネットワーク技法のことです。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

エッジコンピューティング
IoT における課題を解決するエッジコンピューティングとは?column
エッジコンピューティングとは、端末やそれと接続されたサーバでデータ処理をおこなってからクラウドなどの上位システムにデータを送信することで、負荷を分散するネットワーク技法のことです。端末から収集した情報をクラウドで処理する前に分散して処理するため、低遅延・ネットワーク負荷の軽減などのメリットが得られます。近年、IoTや5Gなどの発展で大容量のデータを取り扱うことが多くなったことで注目されています。今回は、そんなエッジコンピューティングについて説明・事例の紹介をしていきます。

セキュリティの課題

IoTのデバイスが増えるということはネットワークに接続する機器が増えるということです。すなわち、それだけセキュリティリスクを抱える機器が増えるということになります。

IoT端末では、パソコンにウィルス対策ソフトをインストールし、アップデートし続けるような対策を取ることが困難です。そのため、新たな脅威に対応できずにサイバー攻撃の標的になってしまう可能性があります。

セキュリティ対策としては、以下のようなものが考えられます。
・改ざん検知機能を追加するライブラリを使用する
・暗号化技術を採用する
・通信規格やプロトコルを変える

消費電力の課題

搭載させるセンサーが増える程、通信するデータや距離が増える程、消費電力は大きくなります。
消費電力が少ないIoTデバイスであれば、バッテリーを充電なしで数年持たせることも可能ですが、多機能なものになるとバッテリー稼働は困難になります。

また、IoTデバイスはひとつの拠点に複数導入されるケースの方が多いため、1端末だけを見ると消費電力が微々たるものでも、全ての端末を合算すると無視できない消費電力になることも多いです。

消費電力軽減のための対策は以下のようなものがあります。
・省電力IoTデバイスの採用
・省電力通信規格の採用

コストの課題

SaaSサービスに慣れた方には注意が必要です。IoTはデバイスという物理的なモノが必要であり、それを運用するために現場にネットワークや電気周りの環境も必要となります。
また、導入して終わりではなく、データを収集した後、それを使える形に加工し、分析し、活用することが主です。

■初期費用
・IoTデバイス費用
・IoTシステム開発費用
・分析費用
・工事費用

■運用費用
・システム運用費用
・分析運用費用

想定よりも費用が掛かってしまった結果「費用対効果が合わなくなってしまった」ということが無いよう、事前のコスト試算が重要となります。

IoT人材の課題

IoTを導入し活用する場合、そのために必要な技術の幅はSaaS系のDXと比較してもかなり広くなります。
必要な技術領域の詳細などはこちらの資料にまとめてありますので、宜しければご覧ください。

特に不足しがちなのが、ハードウェア領域と分析領域、そしてそれを横断して見ることが出来る人です。
社内に最初からいることは稀なので、イチから教育していくか、社外に頼るかの2択となります。
しかし、今やっとDX人材の育成が広まりつつあるという現状で、IoT領域まで人材育成が浸透するのはまだ先になりそうです。

データの課題

まずは、データの中身についての課題です。
・そもそもデータが存在するのか?
・存在しない場合、追加することは可能か?
・それを取得できる通信機能が実装されているのか?
・取得できたとして、それは意味のあるデータになるのか?
確認が必要です。

次に、データの蓄積についての課題です。
・活用に足る蓄積期間はどの程度か?
・蓄積するデータ量は膨大にならないか?
・データを欠損せずに蓄積し続けることが出来るか?
シミュレーションや実験が必要です。

最後に、データの活用についての課題です。
・アクションに繋がる示唆を導き出せるか?
・他システムと連携し、組み合わせ、更なる価値を生み出せるか?
幅広い視野・アイディア等、知識・経験が必要になります。

IoTソリューション導入の進め方とポイント

今回の本題です。

IoT導入は効果が高いが課題も多い、という事が分かりました。
では、どうやってIoT導入を推進し、結果を出していくか?です。
以下の資料では、ここでは書ききれなかったTipsなども紹介していますので、宜しければダウンロードして参考になさってください。

DXもIoTも課題を解決するための手段である

IoT導入の失敗理由としてよく挙がるのが、「”システム導入ありきのプロジェクト”になってしまい、投資を超えるだけの効果が得られなかった」ということがあります。

DXもIoTも課題を解決するための手段に過ぎません。DXやIoT抜きに課題を解決できるならそちらを選ぶべきです。
これを大前提に置きながらプロジェクトを進めてください。

業務改革とシステム改革を両輪で回すことが重要

「業務とシステムを両輪で回す」とは、
業務側の検討完了を待つことなく、粗い仮説・あるべき姿が出来上がった段階で業務と並行してシステムの検討を進めることです。

システムを導入したらうまくいく、なんてことはありません。
良い結果を生み出すモノは、「システム」ではなく、「システム導入によって変わった業務」です。
だからこそ、業務をどう変えるのか?という議論がまず最初です。

今の世の中、劇的に業務やビジネスを変えようとしたら、システム導入を避けては通れません。
「アナログな業務改革 < SaaS等によるDX < IoT」このような順番で、検討領域は増えていきますし、それによる技術的・コスト的要因による制約も多くあります。

業務の目指す姿と業務上の制約、システムの機能とシステム的な制約、これらが相互に作用することは避けられません。
そのため、業務とシステムを同時並行的に検討し、お互いの検討状況に応じて調整を掛けつつ、最終的な姿を決めていく必要があります。

なお、業務検討の前にシステム検討することだけは避けましょう。上記の失敗例である「システム導入ありきプロジェクト」の典型となります。

PoCはやるべき、但しやりすぎない

PoC(Proof of Concept)とは日本語で「概念実証」と言います。
IoTで言えば、IoTシステムを導入するにあたって、その実現可能性や効果を測定するため、実際の現場で行う小規模な実験のことだと思ってください。
SaaSサービスで、無料利用期間に一通り使ってみて業務に適用した際のイメージを掴むようなものです。

IoTでPoCが重要なのは、上記の課題でもあったように、比較的多くのコストが掛かるからです。
PoCでは実現したいIoTの簡易版を作ることになります。正式運用可能なハードウェア・システムを作るのにはそれだけの時間とお金がかかりますが、簡易版であればそこまで必要としません。

また、IoTで業務が変わると言っても、実際にやってみるとイメージと違った、ということが良くあります。しっかり下調べして行った観光地が、思っていたものと違った、という経験に近しいです。物理的なリアルなサービスだからこそ、実際に触ってみないと感じられないことが多くあります。担当者以外は猶更その傾向が強まります。

PoCにより、コストとリスクを抑えつつ投資対効果を測り、合わせて周囲の理解を得ていきましょう。

なお、完璧を求めるが故に、エンドレスPoCでコストだけ消費し続け、そのままプロジェクト自体が立ち消えになるケースもあるのでご注意ください。「概念(コンセプト)」を「実証」することがPoCであり、効果を出すことがPoCのゴールではありません。

関係者、特に現場を巻き込む

アナログな業務改革でもDXでもそうですが、関係者を巻き込むことがとても重要です。
特に、IoTは現場を変える仕組みであるがゆえに、現場の方々の理解・意志が何よりも重要になります。
経営層と現場のリーダーを本気で巻き込めれば、成功までの道のりは明るくなります。
逆に、現場が抵抗勢力になってしまうような進め方をしてしまった場合、スッパリ諦めて止めたほうがマシとなるケースも出てきます。

小さく始めて大きく育てる

IoTは本当に様々な物事を変えることができるため、いきなり完璧を求めると、変えなければならない範囲が大きくなりすぎてコストが増大し、導入までの期間が長くなりすぎます。

また、競合が次々とIoTやAIなどの新しいテクノロジーを用いてビジネスを変革しているのに、遅々としてIoT導入を進められなかったり、ましてや手をこまねいて何もしないのでは、置き去りされるリスクが高くなる一方です。

幸いなことに、IoTにおいて機能拡張はそれほど難しいことではありません。ハードウェアに物理的にその機能が搭載されていれば、多くの場合、ソフトウェアのアップデートで拡張可能です。(だからこそ、最初のハードウェアの選定はとても重要です)

プロジェクトの将来像としてあるべき姿を描きつつ、
フェーズを分けて最初はコアな1部分だけで始め、
徐々にその範囲を広げていく。
というやり方が、我々のお客様において、IoT導入の勝ちパターンとなっています。

IoTならではの課題を解決する

IoTならではの課題とは、以下のようなものです。
・IoT独特のデータ
・ネットワーク
・ハードウェア
・工事
※詳しくは本ページ下部の「IoTソリューション導入の進め方とポイント」を参照ください

短期的には、知識・経験のあるIoT企業とパートナーシップを組んで進めていくことを推奨します。

上記のIoTの課題である「IoT人材」については、一朝一夕に解決できるものではありません。
一方で、IoTの技術的な課題は、知識・経験のある企業であれば適切な解決策を持っています。

IoTは現場環境に合わせた調整が必要になるため、パッケージソフトのような画一的な導入が困難という特性があります。
そのため、短期的には実力のあるIoT企業とパートナーとして導入を進めていき、そのプロジェクトに関わりながらOJTで人材育成を行い、その方がリーダーとなって中長期的に会社としての人材育成を検討していくことが、現実的な進め方だと考えます。

おわりに

IoT企業は一口にIoTと言っても、得意領域が異なります。
勿論、IoTに必要な領域は一通りカバーできるはずですが、その中でもネットワークに強みを持つ企業、ハードウェアに強みを持つ企業、データ分析に強みを持つ企業等様々です。
導入を検討しているIoTシステムにおいて、特にどこの領域が重要なのかを見極めることも、プロジェクトの成否を分ける一つのポイントです。

皆様に信頼できるIoTパートナーが出来ることを心より祈っております。

お役立ち資料

IoTソリューション導入の進め方とポイント
IoTソリューション導入の進め方とポイント

IoTソリューション導入の具体的なステップや要点を紹介しつつ、IoT導入を具体的に進める際に使えるTips紹介いたします。IoT導入プロジェクトでお悩みの方はご一読ください。

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