東京・首都圏のビル老朽化「2030年問題」――”ビルにも健康診断”の時代へ、設備保守のスマート化がカギ

東京や首都圏を中心に、ビルの老朽化が進んでいます。ビルが老朽化するとどのようなことが起こるのでしょうか?また、ビルオーナーや経営者が最も困ることは何でしょうか?
本稿では、1970年~1990年代に大量供給されたビル群が、2030年前後に一斉に築30年~40年を迎え、設備更新・人手不足・競争力低下が同時発生する現象を「ビルの2030年問題」と呼びます。
問題解決のカギを握るのは、設備保守メンテナンスのスマート化です。老朽化が進むビル設備のスマート化を支援するトラース・オン・プロダクトの取り組みをご紹介します。
東京・首都圏のビルは“いま一斉に老い始めている”

(図1:東京都のビル群)
ザイマックス不動産総合研究所が2025年末時点の東京23区・大阪市のオフィスストックを分析した「オフィスピラミッド2025」によると、東京23区のオフィスビル全体の平均築年数は34.6年であることが明らかになっています。
規模別で見ると、中小規模ビルが35.3年、大規模ビルが25.8年。多くのビルで築20年以上が経過しており、中・小規模ビルの83%が築20年以上のゾーンに入っていることも明らかになっています。
東京23区内のオフィスビルは、バブル期の1980年代から1990年代に建てられたものが多くを占めていることから、ビルの老朽化が一斉に始まっているのです。
2030年に入れば、これらのビルの多くが築30年以上を迎えます。
(参考)
オフィスピラミッド 2025(ザイマックス不動産総合研究所)(PDF)
築30年~40年のビルで何が起きるのか?

(図2:ビルの法定耐用年数など)
国税庁によれば、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造ビルの法定耐用年数は、事務所用で50年、店舗用で39年と定められています。
ビルの寿命そのものは100年以上で、鉄筋コンクリート造のビルの寿命は120年から150年です。築30年~40年のビルは、人間で言えば50歳~60歳くらいと考えるとわかりやすいかもしれません。
外見は変わらず健康そうでも、ケアを怠れば身体の調子は悪くなります。ビルも同じで、外見は丈夫に見えても、電気・機械設備などの“中身”は不調の頻度が多くなりがちです。
放置すればある日突然大きな故障が発生します。設備の保守・メンテナンスが重要です。
空調・衛生設備や給水管、ポンプなどの給排水設備は15年から25年で更新時期を迎えます。設備更新や建て替えには大きな費用がかかり、コストを抑えるために安全基準上必要な改修工事を行うにとどめることも多いです。しかし故障が発生した後に修理・交換対応を行えば、現場の負担は増えていきます。
(参考)
耐用年数(建物/建物附属設備)(国税庁)
設備管理を支える”人”が足りない

(図3:現場で使用される設備巡回点検シートのイメージ)
大規模商業施設、総合病院、空港など、来訪者が多く社会的インフラとして機能しているようなビルでは、設備管理の専門職が常駐して設備の巡回・点検を毎日行うことが一般的です。
電気設備・機械設備・ポンプなどを巡回によって目視で確認し、異音や異臭の有無を肌で感じることで、長年設備の安全を守ってきました。
巡回による点検・メンテナンスは今後も重要な業務であり続けますが、一方で日本の少子高齢化が進む中、人手不足により設備管理を行う人員も不足し始めています。
老朽化した設備による故障が頻発すれば、さらに負担は増えていきます。設備の管理・保守メンテナンス業務の現場は、いま“高齢化した設備 × 人手不足 × 突発対応”という三重苦に直面しています。
ビルオーナー・経営者が直面する現実―テナントが入らない

(図4:ビルのテナント募集のイメージ)
ビルに入居するテナントにとって、賃料以上に重要なのが快適性・安全性・安定稼働です。
築30年~40年のビルで設備が老朽化すれば、空調設備が古く、効きが悪い、インターネット回線が遅い、トイレが古い、エレベーターが故障しがちなど、テナントから様々な不満が起こります。
空室が多くなり、賃料収入が下落します。新しいテナントを呼び込むことも、賃料を上げることもできないまま、負のスパイラルに陥ることとなります。東京や首都圏にはこのような状態に足を踏み入れているビルが数多く存在します。
問題解決のカギは「設備保守メンテナンスのスマート化」
「ビルの2030年問題」を解決するには、ビルの”中身”である設備管理・保守メンテナンスをテコ入れすることがカギとなります。IoTやAIを用いた設備管理のデジタル化、スマート化の実現が求められています。
巡回点検から「データ監視」へ

(図5:データ監視のイメージ)
これまで人が設備機器を巡回し、紙の確認表を用いて目視などで確認していました。これからはIoTセンサーやネットワークで機器の通常時と異常時のデータを取得し、現在の機器の状態を可視化します。
データは設備機器から離れたところで確認することができ、異常はアラームで知らせることができます。これまで個々の技術者に頼って行われてきた点検は客観的なデータで捉え直され、データが蓄積することでより高精度な保守が可能となります。
人による巡回とセンサーによる監視を組み合わせたハイブリッド型の設備管理が重要となります。
突発対応から「予兆保全」へ
何かが起こってから呼ばれて対応する、故障してから直す時代は、終わりを迎えつつあります。
振動・温度・電流・稼働時間などの客観的なデータは機器の状態を見える化し、平常時と故障時の挙動を明らかにします。
故障率、停止時間などのデータも取得し、故障を予防するだけでなく、故障の前兆をとらえる「予兆保全」の実現が可能となります。
設備管理は「コスト」から「資産価値」へ
設備管理のスマート化は重要な経営戦略となります。
設備への投資が単なる出費ではなく、来訪者が安全で快適に過ごすための土台となり、テナントの満足度に直接的に貢献します。テナントの高い満足度は新たなテナントの呼び込みにつながり、賃料の値上げの実現につながります。
ビルの健康診断を――設備管理を“予防保全 “に変えるトラース・オン・プロダクトのIoTサービス

(図6:AIrux8管理画面のイメージ)
トラース・オン・プロダクトの「IoTインテグレーション」は、設備管理のスマート化・DX化を支援します。
オフィスビル、工場や店舗などの空調や照明を最適化し、最適なエネルギーで最適な環境を実現するAIrux8により培ったIoT設計・データ分析・センシング技術は、老朽化が進む東京都心のビルの“健康寿命”を伸ばすことに貢献します。
IoTセンサーによる設備の「見える化」を実現

(図7:「設備の見える化」画面例)
監視の対象となる設備に、センサーを設置し、温度・振動・電流・電圧などをモニタリングします。収集したデータはクラウド上のプラットフォームに集約することで、各設備機器の状況をわかりやすく確認することができます。
プラットフォームでの遠隔監視を行うことで、現場の巡回業務の負担を軽減します。
アラームによる異常検知を実現
各設備の正常運転時のデータより、正常値から外れた際には即座に管理者に通知を行います。
24時間365日システムが設備を監視する体制を作ることで、夜間や休日の巡回への負担を軽減します。また、設備の異常発生を迅速に捉え、大きなトラブルになる前に対応できる体制を整えます。
トラース・オン・プロダクトが目指すのは自動化による「予防保全」
これまで熟練した現場の専門職による経験と知識により、設備の微細な異常が捉えられてきました。
トラース・オン・プロダクトでは、電流、音、振動、温度、カメラなど、さまざまなセンサーを統合的に使用し、正常時と異常時のデータを蓄積。蓄積されたデータをAI等で分析し、故障の予兆を検知します。最終的には、設備の予防保全を実現し、人の手を介さない保守メンテナンスを実現します。
トラース・オン・プロダクトの設備保守メンテナンスのDX化については、下記記事もご覧ください。
▼人手不足・人件費高騰解消へ IoTを活用したトラース・オン・プロダクトの保守・メンテナンスDXへの取り組み
“中高年以上”に差し掛かった東京のビル群も、これからは“中身”である設備機器の異常をとらえる”健康診断”が必要です。設備保守のスマート化によりビルの“健康寿命”を延ばす「予防保全」の実現は、ビルで過ごす人々の安全や健康を守ることにつながります。
最適な環境を最適なエネルギーで実現するAIrux8は、ビルを訪れ、働き、生活する人々の快適な時間・空間を守ります。
お役立ち資料

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