空調の省エネは必須 ゼロ・エネルギー時代のキーワード「ZEB」とは?AIの果たす役割とは?

2025年8月23日
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省エネ・創エネで注目されるZEBとは?

2025年の夏も猛暑が猛威を振るっている。8月5日には、群馬県伊勢崎市で史上最高気温を更新する41.8度を観測。8月現在、歴代最高気温の記録の上位5位を2025年が独占する形となっている。背景には地球温暖化による影響があり、来年以降さらに気温が上昇する可能性もある。

(図1:全国の歴代最高気温)出展:気象庁「歴代全国ランキング」

近年、企業が直面する環境問題への取り組みとして、エネルギー消費を抑える省エネルギー技術の導入に注目が集まっている。特に建築分野では、省エネルギーへの考え方として「ZEB」が注目されており、今後幅広く導入されていくことが考えられる。今回の記事では、ZEBについて紹介するとともに、ZEBにおいて重要なAIが、どのような役割を果たすかについても紹介する。

 

ZEBとは:年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにする建物

(図2:ZEBとは?)出展:ZEBロードマップ検討委員会におけるZEBの定義・今後の施策など(PDF)(経済産業省)

ZEBとは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称。一般的には、快適な室内環境を保ちながら、高断熱化・日射遮蔽、自然エネルギー利用、高効率設備により、できる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電等によりエネルギーを創ることで、年間で消費する建築物のエネルギー量が大幅に削減されている建築物のことを言う。

省エネにより消費電力を削減し、再生エネルギーなどにより建物で使う分の電力を補うことで、エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにすることができる。それにより、電力会社から供給される電力を使わず、自らの建物で創られたエネルギーで自立したエネルギー消費を行うことができるようになる。住宅においては同様の考え方でZEH(Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス))がある。

日本は2020年10月、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しているが、カーボンニュートラルの実現において、ZEBやZEHが重要な役割を果たすと考えられる。2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」でも、ZEBやZEHの導入の重点的な加速が述べられており、2030年までの今後5年間、または2050年に向けてこれらの建物が急速に普及することが見込まれる。

 

ZEB化までの4段階とは?

環境省によれば、ZEBに至るまでには4つの段階が設けられており、段階的に目標を達成していくことが求められている。それぞれの段階は以下の通り。

 

ZEB Ready(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル・レディ(ゼブ レディ))

(図3:ZEB Readyのイメージ)出展:ZEB PORTAL(環境省)

省エネにより基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している建物のことを言う。ZEB化に向けた第一歩として、建築物のエネルギー消費が従来の建築物に比べて大幅に低減されるレベルを目指す。この段階では、省エネの促進、断熱性能の向上、高効率な空調システムの導入などにより、エネルギー消費を抑えることに重点を置く。

 

Nearly ZEB(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ニアリー ゼブ))

(図4:Nearly ZEBのイメージ)出展:ZEB PORTAL(環境省)

省エネ(50%以上)に加え、創エネにより75%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している建物を言う。エネルギー需要をさらに抑えつつ、一部のエネルギーを太陽光発電等の再生可能エネルギーでまかなう段階となる。省エネだけでなく創エネも行うことにより、年間のエネルギー収支をよりバランスの取れたものにする。

 

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ゼブ))

(図5:ZEBのイメージ)出展:ZEB PORTAL(環境省)

省エネ(50%以上)に加え、創エネで100%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している建物を言う。この段階で初めて、ZEBの基準を満たすこととなり、年間通じての一次エネルギー使用量の合計がゼロまたはゼロに近くなる。これを実現するには、エネルギー効率の最大化とともに、建築物自体で生成した再生可能エネルギーを最大限に利用することが必要だ。

 

ZEB Oriented(ネット・ゼブ・エネルギー・オリエンテッド(ゼブ オリエンテッド)

(図6:ZEB Orientedのイメージ)出展:ZEB PORTAL(環境省)

ZEB Orientedは、延べ床面積が10,000平方メートル以上の建築物に限り追加されたZEB化への最初の段階となる。一次エネルギー消費量において、事務所、学校、工場等では40%、ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所等では30%の削減を実現し、またさらなる省エネに向けた未評価技術を導入している建物を言う。延べ面積10,000平方メートル以上の建築物はエネルギー消費量ベースで年間の新築着工に占める割合が36%程度と大きく、新築建築物全体のエネルギー消費量に与える影響が大きいことから重点的にZEB化の実現・普及が必要と考えられている。

 

創エネツールの最有力候補「ペロブスカイト太陽電池」

(図7:ペロブスカイト太陽電池のイメージ)

ZEB化を進めるためには、省エネだけでなく創エネ(エネルギーを創ること)が求められる。創エネで活躍するのは太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーであり、特に企業において有力なのが太陽光発電だ。経済産業省は、2026年度より化石燃料を多く使う企業に対して屋根に置く太陽光パネルの導入目標の策定を義務づけることとしており、太陽光発電の利用拡大が見込まれている。また、日本で発明され、薄くて軽い、さらに変形も可能な「ペロブスカイト太陽電池」は、量産化されれば多くの企業や工場等での導入が見込まれ、ZEB化に大きく貢献する創エネツールの最有力候補として期待されている。

 

まずは空調や照明の省エネシステムの導入を―AIが大きな役割果たす

ZEB化の第一歩は省エネの促進であり、まずは空調や照明の省エネを進め、人の手で運用するのではなく、オフィスやビル全体でシステム化することが重要となる。ITを活用したエネルギー管理システム「ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)」の導入はその一例となる。BEMSについては以下の記事を参考いただきたい。

▼夏の電気代補助事業がスタート 企業オフィスのスマートな省エネ・脱炭素の進め方

https://www.tranzas.co.jp/column/202507_smart_energy_saving/

 

空調・照明の省エネにおけるAIの果たす役割とは?

建物のエネルギー使途別の消費状況を見ると、空調や照明で7割以上を占めていることがわかる。したがって空調や照明のエネルギー管理を行うことが、省エネにおいて最も効果的であると言える。

AI(人工知能)を使った技術は、空調システムの効率化において画期的な役割を果たすことができる。AIは、ビル内外の温度、湿度や室内の人の混雑状況などを様々なセンサーにより取得し、それらのセンサーデータをリアルタイムで分析し、最適な空調設定を自動で行うことができる。さらに、それらのデータにビル利用者の行動パターンや天候予報などの外部情報を組み合わせることで、より効果的な省エネを実現する。無駄なエネルギー消費を大幅に削減し、ZEBの実現へ一歩近づくためには、AIの活用が欠かせない。AIを用いた効果的な省エネ空調システムを実現するためには、以下のような戦略のもとで行うことが効果的だ。

データ収集と分析:ビル内外のセンサーからのデータを収集し、利用パターンや環境変化を分析

AIによる最適化:収集したデータをもとに、AIが最適な空調設定を自動で行う

定期的な見直しと更新:AIモデルの定期的な見直しと更新を行い、精度の向上と最新の省エネ技術の導入を図る

AIがオフィスやビルに固有のデータの特徴を把握し、学習していくことで、その場所ならではの最適な設定を導き出し、快適さを失わずに消費電力の削減を実現する。これにより、エネルギー効率の高い空調システムの運用が可能となり、長期的に考えてコスト削減に寄与することとなる。

 

AIとセンサーで空調や照明のエネルギー削減を実現する「AIrux8」

(図8:大手百貨店オフィスでの消費電力削減効果例)

トラース・オン・プロダクトが開発する「AIrux8」は、ビルのオフィス、工場、店舗などの空調や照明のエネルギー削減を実現する電力削減AIシステムだ。特許を取得している独自のアルゴリズムを用いたリアルタイム制御により、室内の快適性を保ちながら省エネを実現できる最適な運用を行うことができる。過去の実績ではAIrux8稼働前と比較して30%以上の消費電力の削減を実現し、ZEB化にも大きく貢献するシステムとして、今後の導入拡大が見込まれる。

▼大手老舗百貨店オフィスへのAIrux8導入 空調電力25%削減を実現できた理由

https://www.tranzas.co.jp/column/airux8_casestudy04/

(図9:AIrux8の消費電力削減効果-オフィスで消費電力31.2%の削減達成)

AIrux8のシステム導入には特別な知識は必要なく、導入前のオフィスの調査やAIのチューニング等、オフィスへの導入はすべてトラース・オン・プロダクトで実施する。消費電力の削減効果や現状の電力消費状況は見える化されており、管理画面で随時確認することができる。AIrux8による消費電力削減効果をより詳しく知りたい人は、下記サイトで電力削減シミュレーションを実施することができるので確認してみてほしい。

▼施設やオフィスの「コスト削減」を支援する―まずは簡単シミュレーションから

https://airux8.traas.co.jp/

 

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