夏の電気代補助事業がスタート 企業オフィスのスマートな省エネ・脱炭素の進め方

2025年7月26日
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大手百貨店オフィスでのAIrux8導入結果

(大手百貨店オフィスでの消費電力削減効果例)

2025年7月より、政府による夏の電気料金支援制度がスタートした。連日の猛暑で冷房が欠かせない中、7月は全国で前月比500円前後の値下げ(各電力会社による低圧の平均モデルでの比較)となっている。この支援はエネルギーコストが高騰している企業にとってコスト減の効果は大きいが、3か月限定の一時的な軽減策であり、持続的なエネルギーコスト軽減にはつながらない。カーボンニュートラルの実現、国際情勢の不安定化によるエネルギー安定供給の不確実性の高まりへの対応などが求められる今、中長期的な省エネへの取り組みの重要性が増している。

今回のコラムでは、企業のオフィスに必要とされる省エネ施策についてまとめた。

 

夏の電気料金支援策 2025年7月から9月までの3か月間実施

(図2:電気・ガス料金負担軽減支援事業)

今夏の電気料金支援は、足元の物価高に対応する観点から、猛暑への対応として電力使用量が増加する7月、8月、9月の3か月について行われるもの。2025年7月使用分については低圧で2.0円/kWh、高圧で1.0円/kWh、2025年8月使用分については低圧で2.4円/kWh、高圧で1.2円/kWh、2025年9月使用分については低圧で2.0円/kWh、高圧で1.0円/kWhがそれぞれ値引きされる。値引き単価に月々の使用量を掛けることで月々の値引き額を算出できるが、具体的な値引き額を知りたい場合は下記サイトを参照してほしい。

▼電気・ガス料金支援(資源エネルギー庁)

https://denkigas-gekihenkanwa.go.jp/

 

中小企業の省エネ・脱炭素調査 省エネの理由、光熱費・燃料費削減が7割

(図3:エネルギー価格上昇の経営に与える影響について)出展:「中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」集計結果(日本商工会議所・東京商工会議所)(PDF)

エネルギー価格の上昇は企業経営に影響を及ぼしているか、企業の省エネはどの程度進んでいるのか。日本商工会議所・東京商工会議所が2024年6月に公表した「中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」によると、エネルギー価格上昇により、約9割(88.1%)の企業が経営に影響を受けていることが明らかとなった。「影響は深刻で、今後の事業継続に不安がある」とする企業も約1割に上っている。

エネルギーコスト上昇対策として実施していることでは、自社製品・サービスの販売価格への転嫁が約4割と最多だが、コスト上昇分を完全に転嫁できている企業はわずか約2%と少ない。価格転嫁の他に、「省エネ型設備への更新・新規導入」や「運用改善による省エネの推進」など、省エネへの取り組みによりコスト削減を図る企業が多いようだ。

そのため、省エネ・脱炭素に取り組む理由としては、「光熱費・燃料費の削減」が約7割と圧倒的に多く、「企業としての評価や知名度の維持・向上」(30.5%)、「ビジネス環境の変化や技術革新への対応」(25.6%)などを大きく引き離している。

しかし一方で、省エネ・脱炭素に取り組む課題として「マンパワー・ノウハウが不足している」と回答する企業が半数以上に上り、省エネ・脱炭素に取り組むためのステップを表す「知る・測る・減らす」において、どのステップでもハードルの高さを感じている企業が多いようだ。政府や自治体に期待する支援内容として「省エネ設備、再エネ導入等に対する資金面での支援」を望む企業が7割以上に上っている。

▼「中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」集計結果(日本商工会議所・東京商工会議所)(PDF)

https://www.jcci.or.jp/file/sangyo2/202406/v2_cn_chosakekka.pdf

 

コストをかけずに行う夏の省エネ対策 フィルター清掃・設定温度の確認・日光を遮る工夫を

(図4:オフィスビルの省エネ基本アクション)出展:夏季の省エネメニュー(事業者の皆様)(資源エネルギー庁)(PDF)

 

(図5:オフィスビルの省エネ-省エネメニュー)出展:夏季の省エネメニュー(事業者の皆様)(資源エネルギー庁)(PDF)

資源エネルギー庁では、事業者向けに夏季の省エネメニューを公開している。オフィスビルにおいては、消費電力のうち空調が約49%、照明が約23%を占め、これらに対する有効な対策をリストで公開している。空調については、

・執務室の冷やしすぎに注意し、無理のない範囲で室内温度を上げる

・使用していないエリアは空調を停止する

・日中の日射を遮るために、ブラインド、カーテン、遮熱フィルム、ひさし、すだれを活用する

・目詰まりしたフィルターを清掃する

・電気室、サーバー室の空調設定温度が低すぎないかを確認し見直す

・室外機周辺の障害物を取り除くとともに、直射日光を避ける

などの対策が有効だ。省エネメニューでは、オフィスビルのほかに卸・小売店、食品スーパー、医療機関、ホテル・旅館、飲食店、学校、製造業など、業界ごとに省エネ対策が紹介されている。

▼夏季の省エネメニュー 事業者の皆様(資源エネルギー庁)(PDF)

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/data/2025_summer/syouenemenu_jigyosha02.pdf

 

IT活用し省エネ貢献 重要性増す「ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)」

(図6:BEMSの例)出典:「トップランナー機器への買い替え」(環境省)(PDF)

ITやIoTを活用してビルの照明や空調などを制御し、最適なエネルギー管理を行う「ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)」の重要性が増している。BEMSは人の混雑状況や温度を感知するセンサーからの情報などをネットワークで収集し、データ解析を行い、空調・照明などの最適な制御を行うことで、ビル全体のスマートな省エネを実現できるもの。BEMSでは、

・機器の運転状況を示すデータの蓄積

・データのグラフでの可視化

・データの解析、問題点への気づき

・改善策の検討と実施

の4つのサイクルに沿って省エネを実践し、エネルギーの使用効率を向上させる。エネルギーマネジメントシステムには、工場の管理を行うファクトリーエネルギーマネジメントシステム(FEMS)、住宅の管理を行うハウスエネルギーマネジメントシステム(HEMS)などもあり、今後の脱炭素社会の実現に向け、より効率的・効果的な省エネ施策のひとつとして、多くの業界で採用されていくと見られる。

▼ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)(国立環境研究所)

https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=16

 

AIでエネルギー消費を制御するAIrux8 空調の消費電力削減に大きな効果

(図7:AIrux8の消費電力削減効果-オフィスで消費電力31.2%の削減達成)

オフィスで集めたデータの解析にAIが使用され、AIによる最適な空調の制御を実現しているのが「AIrux8」だ。人感センサーの情報、外気温、室内温度等の情報を可視化し、データはクラウドを通してAIに解析され、導き出された最適な設定温度・風量などによって空調が制御される。AIrux8は人の手による運用では実現できないスマートな省エネを実現し、過去の実績ではAIrux8稼働前と比較して30%以上の消費電力の削減を実現してきた。

 

(図8:大手百貨店オフィスでの消費電力削減効果例)

一般的に、オフィスには窓際に設置する「ペリメーターエアコン」、ビルの中央管理室などで制御される「セントラルエアコン」、フロアごと、部屋ごとなどに設置され、設置場所で制御する個別エアコンの3種類の空調設備がある。トラース・オン・プロダクトが2024年に大手老舗百貨店オフィスで実施した実証実験により、AIrux8を稼働させることでこれら3種の空調を最適に制御し、個別エアコンを中心とした消費電力削減に大きな効果があったことが明らかになっている。AIrux8を始めとするAIによるエネルギーマネジメントシステムは、今後の省エネ・脱炭素の実現に大きく貢献するだろう。

▼大手老舗百貨店オフィスへのAIrux8導入 空調電力25%削減を実現できた理由

https://www.tranzas.co.jp/column/airux8_casestudy04/

AIrux8のシステム導入には特別な知識は必要なく、導入前のオフィスの調査やAIのチューニング等、オフィスへの導入はすべてトラース・オン・プロダクトで実施する。AIrux8による消費電力削減効果をより詳しく知りたい人は、下記サイトで電力削減シミュレーションを実施することができるので確認してみてほしい。

▼施設やオフィスの「コスト削減」を支援する―まずは簡単シミュレーションから

https://airux8.traas.co.jp/

 

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