上海の近代都市

 先日シンガポールで、大手の建築デザイン会社と打ち合わせをいたしました。建築デザイナーを200名程抱える老舗で、アジア中心にビル・コンドミニアム・ホテル等幅広く手がけている、勢いのある企業でした。打ち合わせの趣旨は、今後ビル設計にIoT設計も取り入れていく必要があり、協業を検討したいという内容です。お会いしたのは30代後半の若い2代目オーナーでした。

 打合せはシンガポールならではのフランクな進行で、初回の打合せとしてはまずまずの内容だったかと思います。打合せの途中、先方オーナーが上海のコンドミニアム(日本で言うマンション)と近隣施設を含む都市の設計を手がけた事例をスクリーンに写し出し、どんなIoT都市を過去手がけ、今後どうして行きたいかの説明を行いました。

 隣接するコンビニエンスストアーでは、入り口自動ドアのガラスにタッチパネルと顔認証システムが組み込まれており、顔認証によりドアの自動開閉が行われていました。支払いも顔認証とQRコード。エレベーター制御も携帯連動。室内照明の自動制御&遠隔制御などなど、日本には未だ見られないIoT都市がそこにはありました。

 便利なのか?経済合理性がそこにはあるのか?本当に利用価値があるのか?議論をすれば賛否両論出ようかと思うIoTぶりです。しかし、着目ポイントはそこではありません。デジタルトランスフォーメーション(※注1)が世界中で進行している現在において、もの作りを生業とする企業にとってイノベーションへの投資リスクより、しないリスクの方が圧倒的に高くなってきています。

 災害国である日本人の考え方の根底には、”万が一の無いよう”、”もし○○の場合”、“どんな実績がある?”が必ずあります。それが世界に誇れる製品品質や匠の技を生み出す日本の感覚を育てている事は日本の財産です。

 しかし、これは同時にイノベーションのスピードにブレーキをかける大きな阻害要因にもなっています。北京や上海にある顔認証レジや、アリババの運営する無人スーパーを昨年見に行ってまいりました。顔認証レジは停止し、使われておらず、無人スーパーの支払いは人が無人精算機の使い方をお客様に教えているのが実態です。

 しかし私は、国家全体のイノベーションというマクロの視点から言えば、実が伴わない運用になるリスクがあろうとも、各最新OSのリリースの如く、新しい試みを適切量のテスト実施にて市場投入し、エラー&コレクションによってデジタルトランスフォーメーションによる新しい価値観を生んで行く事の方が今の時代は重要な気がしています。

 それぞれの国の文化や市場傾向を掴み、それに合った製品を適切な場所に適切なタイミングで提案していく事が重要なのかもしれません。そういった意味でも当社が国際展開をしている事に大きな意味があろうかと考えています。


※注1:進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること。ただし、その「変革」は単なる変革ではなく、デジタル技術による破壊的な変革を意味する「デジタル・ディスラプション」、すなわち既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションであるケースが多い。